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ひっ迫する医療現場
迫られる清掃業者の選択と現状

堺ジャーナル(第353号)の記事より。

コロナ禍を引き継ぎ、迎えた令和3年。新年には早期収束を願う声も多かった。一方で、首都圏をはじめとした大阪や兵庫などの都市部では、緊急事態宣言が発令されるなど現下の情勢は厳しい。これに伴って、日々危殆に瀕する医療現場では、清掃業者が第一線に入れず、看護師など医療関係者が病室のごみ処理やトイレの清掃までを行っている現状がある。厚生労働省の依頼により全国ビルメンテナンス協会が、病院清掃を行う加入事業者に行ったアンケートによれば、コロナ患者が入院する病棟等の清掃に対応できるかといった質問に対して、全国約1000社のうち未回答が4割、対応可能と答えたのはわずか88社であった。なぜ、清掃業者の対応は進まないのか。

 

コロナに対応 88/1000社
病院の清掃・メンテナンスを行う株式会社加藤均総合事務所(本社・堺市)の池本一哉部長は、「業者としては、いわゆるレッドゾーン(危険地帯)に入って手伝いたい気持ちもあるが、国の補償が定まっていない中では、なかなか動くことが難しい。従業員には高齢者も多く、看護師などの医療従事者とは給料も異なる。清掃業者に対する特別手当のようなものもない中、どうして命のリスクを個人に抱えさせてまで病院に行けと言えるのか。また、現場では防護服の着用が必須となっているが、この着脱は非常に感染リスクが高く、プロの看護師でさえミスを起こしかねないと言われている。現在は、医師や看護師の指導の下、2人体制で着脱を行っているが、こうした感染予防のノウハウは未だ浸透していない。『感染しない、感染させない』が最優先である中、清掃業者がクラスターを起こしてしまっては元も子もないだろう。肝心な補償については、現状、国からの補助金は病院に対して支給されているものの、直接清掃業者に支給されているものはない。国が直接、清掃業者に対して委託する体制をとらなければ、このアンケートが示す数字が好転することはないだろう」と厳しい現状を話す。

コロナ禍を乗り越え
社会に貢献

また、同社加藤浩輔社長(大阪ビルメンテナンス協会副会長)は、「日本の医療は世界に誇るものだが、コロナ禍により医療崩壊間近との声もある。我が社としても、『コロナ禍を乗り越え、社会に貢献しよう』というスローガンの下、社会貢献を何よりとして医療業界を支えていきたい。エッセンシャルワーカーの一員としての自覚を持ち、何とか対応していきたい気持ちはあるが、前提にあるのは従業員及びその家族の安全。現状では危険な業務は受けられない。従業員の中には、少しでも力になることができればと現場での作業を望む方もいるが、家族のことを考えれば難しい。現在、全国ビルメンテナンス協会では、医療機関を現場としている事業者における従事者の確保と、安全性の担保、不安の解消を図るために、事業者に対する金銭的支援や衛生用品の支給など、具体的な改善要望を国に訴えている。今後の国の体制整備に期待したい」と述べる。